英語コーパス学会東支部

 

What's New

英語コーパス学会東支部 研究会

コーパスの言語学諸分野における活用(2) 歴史言語学

 

日時: 2017年3月11日(土) 14:00~17:00

場所: 東京成徳大学 東京キャンパス(東京都北区十条) アクセス

参加費: 無料

司会・講師 塚本 聡 (日本大学)

    講師   西村 秀夫(三重大学)

         神谷 昌明(豊田高専)

発表概要 (PDF以下と同一)

英語史コーパスとしてはHelsinki Corpusがよく知られている。その拡大版としてのPenn-Helsinki Parsed Corporaが利用されている。一方、最近の研究では史的コーパスとしてCorpus of Historical American Corpus(COHA)が頻繁に利用されている。Early English Books Online (EEBO)として史的テキスト電子化プロジェクトも進んでいる。
本発表では、Helsinki Corpus以降の動向を概観した後、多くの研究で使用されているPenn-Helsinki Parsed Corpusとして公開されている構文解析コーパスの活用について事例紹介を試みたい。

 

 

史的英語コーパスの25年

西村秀夫(三重大学) 

 古英語期から初期近代英語期までを約150万語でカバーする、世界最初の史的英語コーパスHelsinki Corpus(以下、HC)が完成したのは1991年のことであった。HCは「英語史的な研究に極めて重要な役割を果たす可能性のあるコーパス」(齊藤 1992)として多くの英語史研究者に歓迎された。実際HCを利用した研究が活発に行われ、その有用性が明らかになったが、同時に、扱う言語現象によってはコーパスのサイズが小さすぎるという問題点も指摘された。HCの拡大改訂版の公開も期待されたが結局実現しなかった。
 しかしながら、HCの公開は英語の通時的な研究に対する関心を呼び起こし、多様な史的コーパスの構築、コーパス言語学的な手法に基づく英語史研究を大いに促進した。近年の文法化理論、歴史社会言語学、歴史語用論等の進展はコーパスなくして考えられない。
 (後期)近代英語、現代英語における変化に対する関心の高まりも最近の特徴である。COCA、 COHAを利用している人は多いであろう。また、LOB、 FLOBにつながるBLOBやBE06の今後の動向も注視する必要がある。
 私の話では、HC公開から25年の間に史的英語コーパスどのように多様化し、それを利用した言語研究がどのように深化してきたかを概観する。

 

 

句動詞の起源・発達―古英語に現れる接頭辞付動詞の抽出; YCOEを利用して―

神谷昌明(豊田高専)

句動詞(phrasal verb)とは、「動詞+副詞」、「動詞+前置詞」、「動詞+副詞+前置詞」の結び付きで多用な意味を表す口語的表現であり、現代英語の特徴の一つである。句動詞の発達には二つの過程が考えられる。[1]古英語の接頭辞付動詞(prefixed verb)からの発達、即ち動詞の前に位置していた分離接頭辞(または副詞)が動詞の後に移動し、句動詞(「動詞+副詞」)の原型が出来上がったこと(例:upgango up)。[2]フランス語源の多音節の一語動詞を翻訳する過程、即ち本来語である英語の基本動詞と副詞で置き換える過程を経て、句動詞が量産化されたこと(例:ex-(強意)tinguish (消火する)→ put out(火を消す))。
本発表では句動詞とは何かを概説し、[1]の古英語の接頭辞付動詞から発達した句動詞の起源に焦点を合わせ、通時的コーパスであるYCOEを利用して、接頭辞付動詞、特に「up- + 動詞」、「out- + 動詞」を全て抽出する。そして古英語の接頭辞付動詞(「up-+動詞」、「out-+動詞」)が現代英語までどの程度存続しているのか検証する。古英語接頭辞付動詞と現代英語に残る接頭辞付動詞の対応関係、さらに接頭辞付動詞に対応する句動詞をOED等の記述を踏まえながら、表にまとめる。

例:

古英語 接頭辞付動詞 現代英語 接頭辞付動詞 対応する句動詞
upgan upgo 廃語 go up
uphebban upheave まれ heave up
utcuman outcome 廃語 come out
utdrifan outdrive まれ drive out

 

 

MEにおける句動詞の変遷―PPCME2を利用して

塚本 聡 (日本大学)

英語は、古英語から中英語にかけてOV言語からVO言語に変化したといわれている。
 
(1) and now thou shalt hir love lose for ever, and she thyne. (CMMALORY,183.2549)
(2) and thus they began to gadir hir people                            (CMMALORY,19.583)
 
不変化詞を伴う句動詞は、OV言語では動詞に前接するが、VO言語では後続する。前接の現象は現代英語では見られないが、中英語では見られる。
 
(3) Wyth that sir Raynolde gan up sterte with his hede all blody (CMMALORY,200.3145)
(4) And sir Galahad sterte up behynde hym                           (CMMALORY,645.4128)
 
この句動詞の衰退について、Penn-Helsinki Parsed Corpus of Middle English (PPCME2)から不変化詞を伴う句動詞を検索し、その変化の時期や節タイプ、方言などの影響を及ぼす要因を探る。本発表では、神谷講師と共通するupおよびoutに限定し語順の分布について調査する。
初めに、PPCME2に付随するCorpus Searchを用い、構文解析情報を活用し検索する。次にRを利用し、Conditional Inference Treeを作成し、その影響の強弱を検証する。さらに、BNCwebの検索システムとして使用されているCorpus WorkbenchをWindowsにインストールする手順を示しながら、PPCME2のデータを利用しCorpus Workbench上のコーパスとして利用可能とするための手順および検索結果を示す。最後に両者の検索結果の相違について検討する。

 

懇親会

 研究会修了後、懇親会を開催いたします(4000円程度予定)。懇親 会参加希望者は2月28日(火)までに下記のページから登録をお願 いいたします。

懇親会(2017年3月11日)申し込みページ 

 

研究会フライヤー (ご自由にダウンロードしてご使用ください。) 


英語コーパス学会東支部ホーム